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「今のリハビリ分野でいいのかな?」「専門性を高めても給料って本当に上がるの?」
理学療法士(PT)として働いていると、キャリアパスや転職について悩む場面は少なくありません。特に、
- 回復期から急性期へのステップアップ
- 今後ますます重要になる「予防医療」「生活期(在宅)リハビリ」への関心
- 資格を取っても給料に反映されにくい現実
こうしたテーマは、多くのPTにとって共通のモヤモヤではないでしょうか。
この記事では、
- 介護職からPTを志し
- 働きながら夜間4年制で国家資格を取得し
- 回復期病院 → 急性期病院へ転職
- 脳卒中リハビリを専門にしつつ、今は生活期・予防医療に関心を広げている
理学療法士ヤマさんへのインタビューをもとに、PTの転職・キャリア形成で「成功する人」が大切にしている軸と具体的な戦略を紹介します。
この記事を読むと分かること
・介護職から理学療法士を目指した「原点」と、夜間学校を卒業するためのリアル
・回復期→急性期というキャリアパスが、なぜ強力な武器になるのか
・脳卒中認定理学療法士を取得したリアルなメリット・デメリット
・急性期で再入院症例に向き合う中で見えてきた「予防医療」「生活期」の重要性
・転職を成功させるための「キャリアの軸」の見つけ方
・PTから見た「連携しやすい看護師」「チームにいてほしい看護師」の特徴
プロフィール:介護職からスタートした理学療法士
インタビュイー:ヤマさん(理学療法士)
- 前職:デイケア勤務の介護職
- 働きながら4年制の夜間PT養成校を卒業
- 回復期病院で脳血管疾患・整形症例を担当
- その後、急性期病院へ転職
- 脳卒中認定理学療法士(自費で取得)
- 今後は「生活期・予防医療」での活動に関心あり(訪問看護ステーション、クリニックなど)
1. 原点:介護職から理学療法士(PT)を目指した覚悟

1-ⅰ. 介護職時代の悔しさがPTの原点
ヤマさんが理学療法士を目指したきっかけは、デイケアで介護職として働いていたときの悔しさでした。

「利用者さんから『どうしたら歩けるようになる?』と聞かれたんですが、専門的な知識がなくて、うまく答えられなかったんです。そのとき、もっと専門知識を身につけて、ちゃんと力になりたいと強く思いました。」
患者さんの切実な問いに、胸を張って答えられる自分でいたい。その思いが、PTを目指す揺るぎない原点になりました。
1-ⅱ. 働きながら夜間4年制で学ぶという選択
ヤマさんは、介護職として正社員で働きながら、4年制の夜間PT養成校へ進学しました。
- 日中:デイケアでフルタイム勤務
- 夕方〜夜:学校で講義
- 休日:課題・実習準備・テスト勉強

「当時の職場が理解を示してくれて、勤務時間を調整してもらえたのは本当にありがたかったです。正直、振り返るとよくやってたなと思うくらいハードでしたね(笑)。」
夜間部には、同じように社会人経験を経て入学した学生も多く、年齢差よりも本気度でつながれる仲間が多かったといいます。
1-ⅲ. 社会人からPTを目指す人へのメッセージ

「夜間学校って、辞めていく人が多いイメージを持たれがちですが、実際は入学したのに留年してしまうほうが精神的にきついんです。一度入学したら、絶対に留年せずにやり切る覚悟がとても大事だと思います。」
社会人からPTを目指すのは決して遅くない。むしろ、介護職や他職種の経験が、患者理解やコミュニケーションに活きてくる——ヤマさんはそう語っていました。
2. PTキャリアパス戦略:回復期から急性期へのステップアップ

PTとして臨床に立ち始めてから、どの分野で経験を積み、どのタイミングで転職するかはキャリアを大きく左右します。
ヤマさんは、あえて「回復期 → 急性期」という順番でキャリアを描きました。
2-ⅰ. 回復期からスタートした理由
新卒で選んだのは、脳血管疾患が中心の回復期リハビリテーション病棟でした。

「まずは、患者さんの生活やADLの変化をじっくり見られる場所で経験を積みたいと思っていました。家に帰るまでのプロセスを一通り学べたのは、後々すごく役立ちましたね。」
回復期は、
- 発症〜退院までの「回復曲線」を時間軸で追いやすい
- 家屋調査や退院支援カンファレンスを通じて生活を支える視点を持てる
という意味で、「臨床のベースづくり」に最適なフィールドだったと振り返ります。
2-ⅱ. 「回復期→急性期」キャリアが有益な理由
回復期で3年ほど経験を積んだあと、ヤマさんは急性期病院への転職を決めました。

「回復期の職場では、3年くらいで次のステップとして転職する人がわりと多かったです。自分も、他分野への興味や収入面を考えて、急性期への転職を選びました。」
この「回復期 → 急性期」という流れを、ヤマさんは非常に有益なキャリアパスだったと評価しています。
- 回復期で:
- ADL変化や家屋環境、家族支援など生活期に近い経験を積む
- 急性期で:
- 「この人は退院後こうなりそう」という予後予測の精度が上がる
- 退院先(自宅/施設/回復期)を見据えたゴール設定がしやすい

「先に回復期を経験していたからこそ、急性期でこの先の生活まで見据えたリハビリができたと感じています。」
2-ⅲ. 急性期で求められる「リスク管理」の知識
一方で、回復期から急性期への転職には急性期ならではのハードルもありました。

「急性期では、血液データやバイタル、栄養状態などから今、この負荷で訓練しても大丈夫かを瞬時に判断する場面が多くなります。」
急性期を目指すなら、事前に押さえておきたいのはこのあたりです。
- 血液データ(炎症反応・貧血・凝固系など)
- 栄養状態・サルコペニア(NSTとの連携)
- 循環器・呼吸器などの基礎医学のアップデート
- 画像所見(CT・MRI)をリハビリ視点で読み取る感覚

「回復期から急性期に移る前に、基礎医学を少しずつ復習しておくとスムーズだと思います。急性期は、まさにリスク管理が命の現場です。」
急性期の1日の流れや、1年目がぶつかりやすい「3大壁」を具体的に知りたい方は、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 理学療法士1年目の教科書|急性期の1日と「3大壁」の越え方
3. 専門性と給与のジレンマ:資格はどこまで評価されるか

ヤマさんは、脳卒中分野の専門性を高めるため、自費で「脳卒中認定理学療法士」の資格を取得しました。
→ 「認定・専門理学療法士制度の種類と特徴はこちら」
脳科学の基礎から臨床へのつなげ方を学びたい方は、脳卒中認定理学療法士ヤマさんが解説する『新人必見!脳科学でリハビリが変わる|『リハビリテーションのための脳・神経科学入門』で学ぶ臨床思考のつくり方』も参考になります。
3-ⅰ. 専門資格を取って見えたリアル

「勉強自体はすごく楽しかったですし、先生方の講義や文献を通して、臨床での引き出しは確実に増えました。」
一方で、給与面への直接的な反映はほとんどなかったと言います。
【専門性と給与のリアル】
- 脳卒中認定理学療法士を自費で取得
- しかし、資格手当や給与増はほぼなし
- 患者さんの変化・医師や看護師からの信頼といった「目に見えにくい評価」が中心

「資格を取れば給料が上がると期待しすぎると、現実とのギャップでしんどくなるかもしれません。でも、担当できる症例の幅が増えたり、カンファレンスで発言しやすくなったのは大きなメリットでした。」
お金だけを目的に資格を取るのではなく、「どんな患者さんを診たいか」「どんな強みを持ったPTになりたいか」という軸とセットで考えることが大切だと感じたそうです。
「年収の壁」やメーカー転職も含めて、お金とキャリアのリアルを知りたい方は、こちらのインタビューも参考になります。
→ 【PTの給与限界】理学療法士4年目がメーカー転職を決めたリアル 年収の壁・やりがい・キャリア戦略
4. 脳卒中リハビリを選んだ決定的な理由
4-ⅰ. 「プラトーだから」で終わらせたくなかった
ヤマさんが脳卒中リハビリを専門に選んだ背景には、介護職時代の忘れられない出来事があります。
デイケアで、重度麻痺の利用者さんが担当PTにこう尋ねました。

「先生、腕はもう少し動くようになりますか?」
そのときの答えは、一言。

「もうプラトーだからね。」

「専門家としての判断だったのかもしれませんが、その一言で会話が終わってしまったことに、強い違和感を覚えました。本当にそれだけでいいの?もっとできる説明があるんじゃない?と思ったんです。」
「プラトーだから」で終わらせたくない。患者さんの切実な思いに、少しでも寄り添った言葉と選択肢を提示できる自分でありたい——。その思いが、脳卒中リハビリを深く学ぶ原動力になりました。
5. 今後の展望:急性期から生活期・予防医療へ
5-ⅰ. 再入院症例から見えた「予防」の重要性
急性期病院で働く中で、ヤマさんは何度も同じ理由で再入院する患者さんに多く出会いました。
- 食事・運動・睡眠など生活習慣の問題
- 服薬アドヒアランスの低さ
- 家庭環境や介護力の不足
- 社会資源につながれないままの退院

「急性期でどれだけリハビリを頑張っても、退院後の生活が変わらなければ、また同じことを繰り返してしまう。そのもどかしさを、何度も感じました。」
そこから、ヤマさんの関心は「発症後のリハビリ」だけでなく、「発症を防ぐ予防」や「生活習慣」へと広がっていきます。
5-ⅱ. 生活期・予防医療で実現したいこと

「今後は、訪問看護やクリニックなど生活期(在宅)の現場で、食事・睡眠・活動量も含めたトータルなサポートに関わっていきたいです。」
ヤマさんが描いているのは、
- 訪問リハ・訪問看護での在宅生活の支援
- クリニックや地域でのフレイル予防・運動教室
- 「脳卒中にならない」「再発しない」ための生活指導・環境づくり
といった、病院の外側にも軸足を置いたキャリアです。
→ 「生活期・予防での理学療法のイメージはこちら」
実際に訪問リハ1年目として働いたPTのリアル(やりがい・きつさ・向き不向き)を知りたい方は、こちらのインタビューも読んでみてください。
→ 理学療法士が語る訪問リハビリ1年目の真実…知らないと損するリアル
6. 転職成功の鍵は「自分が何をしたいか」という明確な軸
ヤマさんのキャリアには一貫して、
「患者さんの切実な思いに応えたい」という原点と、「今、自分はどこで、何をするべきか」という軸
が通っています。
転職を成功させるためのポイントも、まさにこの「軸」にあります。
6-ⅰ. 転職前に立ち止まって考えたい3つの問い
ヤマさんの話を聞いていると、キャリアに悩むPTがまず考えるべき「問い」が見えてきます。
【あなたのキャリアを加速させる3つの問い】
- あなたがPTを目指した「原点」は何か?
- 介護職時代の経験?
- 家族の病気?
- 学生時代の実習?
- 今の環境で得られたスキルは、次のステージでどう活かせるか?
- 回復期での生活期支援 → 急性期の予後予測
- 急性期でのリスク管理 → 生活期での悪化の早期発見
- 整形・内部疾患・ICUなど、自分の強みはどこにあるのか
- あなたの理念を実現できる「場」はどこか?
- 急性期/回復期/生活期/介護施設/訪問
- フリーランス/複業PT

「転職活動は、求人票の条件を比較する作業になりがちですが、その前に“自分の原点と強み”を言語化しておくことがすごく大事です。」
6-ⅱ. 職場選びで見るべき「トップ」の視点
ヤマさんが転職で重視しているもう一つのポイントが、「誰のもとで働くか」です。

「自分の大事にしたい価値観やリハビリ観と、トップ(理事長・院長・リハ責任者など)の考え方が合うかどうかで、働きやすさは全然違います。」
チェックしておきたいのは、例えばこんな点です。
- 病院・施設の理念に共感できるか
- 利用者・患者さんをどう位置づけているか(効率重視か、人中心か)
- スタッフの声を拾う仕組みがあるか
- 研修や学会参加への支援があるか

「面接や見学のとき、できればトップの人の話を直接聞いてみることをおすすめします。この人のもとで働きたいか?という感覚は、案外当たる気がします。」
7. 多職種連携から見える「一緒に働きたい看護師像」
リハビリテーションは、多職種連携があってはじめて成り立つ仕事です。中でも病棟で最も関わることが多いのが看護師です。
7-ⅰ. 連携に困るケース

「ごく一部ですが、コミュニケーションが取りづらい看護師さんがいると、情報が入ってこなくてリハビリの方針が立てづらい場面があります。」
- 患者さんの状態変化が共有されない
- 病棟の忙しさから、リハビリの相談が後回しになる
- カンファレンスで対話が噛み合わない
こうした状況が続くと、患者さんにとってベストな支援が遅れてしまう可能性もあります。
7-ⅱ. 「この看護師さんと一緒だと助かる」と感じる特徴
その一方で、「この看護師さんがいると本当に助かる」と感じる看護師には共通点があります。

「リハビリ以外の時間での様子を積極的に教えてくれる看護師さんは、本当にありがたいです。」
例えば、
- トイレ動作・更衣・移乗など、病棟でのADLの様子
- 夜間の不穏・疼痛・転倒リスク
- 家族との会話で見えてくる患者さんの本音
こうした情報を共有してもらえると、PT側も
- 病棟生活で実際に使える練習内容に修正したり
- 退院後を見据えた目標設定を、より現実的に調整したり
することができます。

「リハビリの時間は1日数十分ですが、看護師さんは24時間患者さんのそばにいます。お互いの視点を出し合えたとき、チームとしての強さを一番感じますね。」
8. まとめ:あなたのキャリアを加速させる3つのステップ
介護職からPTになり、回復期・急性期と歩んできたヤマさんの話から見えてくるのは、「どの分野を選ぶか」以上に、「どんな軸でキャリアを選ぶか」が重要だということでした。
最後に、この記事の内容を踏まえて、あなたのキャリアを加速させるステップを整理します。
ステップ1:PTを目指した「原点」を言語化する
- なぜPTになりたかったのか
- どんな患者さんの力になりたいのか
- 自分が一番やりがいを感じる瞬間はどこか
ステップ2:今の強みを整理し、「次のステージ」を選ぶ
- 回復期/急性期/生活期/訪問/施設など
- どのステージなら、自分の強みを一番活かせるか
- どの分野の症例をもっと深く見たいか
ステップ3:軸に合う職場・トップを見極めて転職する
- 理念やリハビリ観に共感できるか
- トップや上司と価値観が近いか
- 学び続けられる環境か

明確な「軸」と、それに見合ったフィールドを選ぶこと。
そして何より、患者さんの切実な問いに応えたいという思いを忘れないこと——。
それこそが、理学療法士としてのキャリアを、後悔のないものにしていく一番の近道なのかもしれません。
\PTの転職やキャリアで悩んでいる方へ/
- 回復期から急性期へのステップアップを考えている
- 生活期・訪問リハに興味がある
- 自分の「軸」がまだモヤモヤしている
そんな方は、一人で抱え込まずに相談してみることも大切です。